「分散投資が大事」と聞いて、少しずつ保有銘柄を増やしてきたものの、気づけば何を持っているのか把握しきれなくなっていた――。そんな方に向けた記事です。
この記事では、銘柄数を増やすと分散効果がどう変わるのかを仮の数値例で確かめたうえで、銘柄数が多すぎることの弊害と、管理できる数に絞るための具体的な方法をまとめます。結論を先に言うと、「何銘柄が正解」という唯一の答えはなく、分散効果と自分の管理能力のバランスで決めるものだと私は考えています。
偉そうに書いていますが、私自身、一時期は保有銘柄が約80銘柄に膨らみ、売買のタイミングを逃した経験があります。その反省も含めてお話しします。
分散効果は銘柄数を増やすほど「逓減」する
個別リスクと市場リスク
株式のリスク(値動きのぶれ)は、大きく2種類に分けて考えられます。
| 種類 | 内容 | 分散で減らせるか |
|---|---|---|
| 個別リスク(非システマティック・リスク) | 業績悪化、不祥事、新製品の成否など、その企業特有の要因 | 銘柄を増やすと打ち消し合い、減らせる |
| 市場リスク(システマティック・リスク) | 景気、金利、為替、相場全体の急落など、市場全体に効く要因 | 銘柄を増やしても減らせない |
銘柄を増やして減らせるのは個別リスクだけです。市場リスクは何銘柄持っていても残ります。だから、銘柄数を増やしていくと、リスクの減り方はだんだん鈍くなり、最後は市場リスクの水準で頭打ちになります。
仮の数値で確かめる
数字で確かめてみます。ここでは単純化のために、次のような仮の条件を置きます。
- どの銘柄もリスク(標準偏差)は年30%
- どの2銘柄の間でも相関係数は0.3
- すべての銘柄に同じ金額ずつ投資する
この条件だと、N銘柄のポートフォリオのリスクは「30% × √(1/N + (1 − 1/N) × 0.3)」で計算できます。結果は次のとおりです。
| 銘柄数 | ポートフォリオのリスク |
|---|---|
| 1 | 30.0% |
| 2 | 約24.2% |
| 5 | 約19.9% |
| 10 | 約18.3% |
| 20 | 約17.4% |
| 30 | 約17.1% |
| 50 | 約16.8% |
| 80 | 約16.7% |
| 無限大(理論上の下限) | 約16.4% |
1銘柄から10銘柄にすると、リスクは30%から約18.3%へ大きく下がります。ところが、10銘柄から80銘柄に増やしても、下がるのは約1.6ポイントだけ。8倍の銘柄を管理する手間に見合う効果とは言いにくいですね。これが「分散効果の逓減」です。
なお、この表はあくまで仮定の上の計算です。相関係数が高い銘柄ばかりなら下限はもっと高くなり、相関が低い銘柄を組み合わせれば少ない銘柄数でもリスクは下がります。実際の分散度は、銘柄の「数」よりも「相関」で決まる部分が大きいので、保有銘柄の相関行列を一度とってみることをおすすめします(手順は相関行列で分散度を点検する記事で解説しています)。
銘柄数が多すぎることの弊害:約80銘柄に膨らんだ話
私の場合、一時期保有銘柄が約80銘柄まで膨らみました。その結果、売買のタイミングを逃すことになりました。決算や値動きを追いきれず、「売るべき局面で手が回らない」「気づいたときには遅い」という状態です。やれやれ。
振り返ると、膨らんだ原因は次の3つでした。
- 気になる銘柄を100株ずつ買っていた:「とりあえず少し持って様子を見よう」が積み重なり、銘柄だけが増えていった。
- 同じセクターの銘柄を揃えていた:セクター内で何銘柄も持てば分散になると思っていたが、同じセクターは値動きが似やすく、数のわりに分散は効いていなかった。
- 優待目的の銘柄が増えた:株主優待を目当てに買った銘柄は、投資判断の基準があいまいなまま持ち続けがちだった。
先ほどの数値例のとおり、銘柄が多すぎても分散効果はほとんど上積みされません。一方で、弊害ははっきりあります。
- 四半期決算をすべて確認できず、保有判断が遅れる
- テクニカルで売り時を判断しようにも、チャートを見る時間が足りない
- 1銘柄あたりの金額が小さく、上がっても下がっても全体への影響が小さいため、管理が雑になる
- 本業の時間を圧迫する
私の投資方針は「本業に影響を与えないことが第一」で、四半期業績で保有判断をし、テクニカルで売り時を判断するスタイルです。この方針で80銘柄は、明らかに管理能力の限界を超えていた次第です。
ここで大事なのは、「銘柄数が多いこと」そのものより、「判断が追いつかない数を持っていること」が問題だという点です。同じ80銘柄でも、ETFのように中身の入れ替えを運用会社に任せられるなら、自分が追う必要はありません。個別株は1銘柄ごとに自分で保有判断をする必要があるので、その判断にかけられる時間が、そのまま持てる銘柄数の上限になると考えています。
管理できる数に絞る3つの方法
1. 分散の役割はETFに任せる
幅広い分散が目的なら、個別株を何十銘柄も持つより、指数に連動するETFを1本持つほうが効率的です。ETFは1本で多数の銘柄に分散でき、個別の決算を追う必要もありません。
私も長期運用の柱は米国ETFにしています。「市場全体に乗る部分はETF、個別株は自分で調べて納得した銘柄だけ」と役割を分けると、個別株の数を自然に減らせます。ETFの経費率などは商品ごと・時点ごとに異なるので、執筆時点の数値は各運用会社の公式サイトで確認してください。国内上場ETFの一覧は、日本取引所グループのETFのページで探せます。
2. セクターの代表銘柄に集約する
同じセクターで値動きが似た銘柄を複数持っているなら、そのセクターで一番納得できる銘柄に集約することを検討します。手順の例は次のとおりです。
- 保有銘柄をセクター別に並べる
- 同じセクター内で日次リターンの相関を計算し、相関が高い組み合わせを洗い出す
- 相関が高いグループの中から、IRで確認したファンダメンタルズが最も納得できる銘柄を残す
- 残りは、テクニカルで売り時を見ながら段階的に整理する
ただし、同じセクターでも相関が高いとは限りません。データで確かめてから集約するのが大事です。
3. 保有ルールをレンジで決めておく
銘柄が増えるのは、買うときの基準がゆるいからです。あらかじめルールを決めておくと歯止めになります。たとえば次のようなものです(数字は一例で、各自の資金量や時間に合わせて決めてください)。
- 個別株の銘柄数の上限を決める(例:自分が四半期決算をすべて読める数まで)
- 1銘柄あたりの投資額や保有株数に、下限と上限のレンジを設ける(「お試しの最小単位だけ」の銘柄を作らない)
- 新しく1銘柄買うなら、既存の1銘柄を売る「入れ替え制」にする
- 優待目的の銘柄も、業績で保有判断する対象に含める
自分の適正数を測るチェックリスト
- 保有銘柄すべての事業内容を、一言で説明できるか
- 各銘柄の直近の四半期決算の内容を把握しているか
- 各銘柄について「どうなったら売るか」を決めているか
- 値動きが似た銘柄を、重複して持っていないか
- 銘柄の管理に、本業や生活を圧迫するほどの時間を使っていないか
どれかに「いいえ」がつくなら、銘柄数が管理能力を超えているサインかもしれません。
まとめ
- 銘柄を増やして減らせるのは個別リスクだけで、市場リスクは残る
- 仮の数値例では、1→10銘柄でリスクは大きく下がるが、10→80銘柄ではわずかしか下がらない
- 銘柄数が多すぎると、決算確認や売買判断が追いつかなくなる
- 分散はETFに任せ、個別株はセクター代表に集約し、保有ルールをレンジで決める
- 適正な銘柄数は、分散効果と「自分が管理できる数」のバランスで決める
約80銘柄を抱えて売買タイミングを逃した身としては、「数を増やす前に、管理できるかを考える」ことを強くおすすめしたい次第です。
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本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

